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--受講される先生たちがこの研修で学んだことを、日常の診療に活かされたら、患者さんにとってありがたいことです。松村先生も研修に関わることで、いろいろプラスになることがあるのでしょうか?

松村:そうですね。スタッフとして参加することで、(普段は見ることができない)実に多くの先生方の診療パフォーマンスを実際に見ることができ、感心する言い回しや間の取り方等で私自身も勉強になることが多いですね。また先にお話ししましたが、私の研究テーマである“プライマリ・ケア”に関連するところが多く、もともと興味があることなので面白いし学ぶことも多いです。さらに生涯教育のプログラムや運営方法、マネジメントについて、準備段階でどんな人が何人くらい必要かなど、予算のかねあいも含め組織作りを勉強するには非常にいい経験をさせてもらっていますね。

今後さらに受講前後の比較で、患者さんの満足度に明確な飛躍がデータとして出てきたら、私が取り組んでいる研究の成果にも結びつくと思っています。より多くの先生方に、ふだん当り前のように行っているご自身の診療を見直し、診断能力や患者さんとのコミュニケーションを向上させる機会として利用してほしいですね。

◆◇◆仕掛人としてなぜこの研修をやろうと思ったのか?
医療の現場にいて、“診察”という医者にとっては日常的に行われている一番当り前のことなのに、患者さん側は満足していなかったり誤解を生じたりすることがある。医師としての基本的な部分での教育がなおざりにされてきているんじゃないか、それを上手に姿勢を正すことができないものだろうか、と思ったのがきっかけでした。
医療面接というものには、効果的に患者さんから必要な情報を引き出すコツとかポイントがあるんですが、その実技をトレーニングする場はなかなかない。ではその機会を作れないかと、いろいろ考えました。10年近く前から構想があったのですが、学んだらそれなりの効果が得られるものにしなければやる意味がない、役に立つ価値ある内容を提供したいと思い、試行錯誤の連続。一番のポイントとなる枠組み作りには、経験豊富で教える力があり、あらゆる症例に対して具体的に検証できる医師、そして患者さん役をやってくれる人が必要不可欠で、このような仕組みを作ろうと決めてから、松村先生をはじめ経験と実力のある先生に声をかけて講師やスタッフとして協力してくれる人を集めました。知恵のある優秀なメンバーが揃ったことで研修のスタイルが完成し、ようやく作る側の準備が整ってきて昨年初めて実施できたのです。


◆◇◆主催者としての苦労と開催してみての実感は?
すでに医師として経験があり、どこで仕事をしても通じるような人たちをターゲットとしていますから、その先生たちに真剣に取り組んでもらえる内容かどうか、基本技法や訓練法、情報として有効で、十分提供できるレベルのものかどうかを慎重に検討しながら作り上げてきました。患者さん役の役者を揃えること、シナリオを作ること、デモパフォーマンスの指導、ビデオの操作等、何もかも初めてのチャレンジ。こうした研修は海外でもやられていますし、自分でビデオを撮って試してみたり、学生の教育に使ったりして、有用だと理解していましたけど、ベテランの先生を対象とした場合については未知数のことでした。
でも、去年と今年2回の開催で大きな手ごたえがあり、これは有用だと確信。主催する側として大きな自信につながりました。このメンバーだから予想以上にいいものができたと言えるでしょう。


◆◇◆参加者の成果と今後のビジョンは?
研修を受ける前と受けた後に、患者さんからアンケートをとってもらい、診療の際に患者さん側の満足度はどうかチェックしてもらうようにしています。今回参加された先生方は目的意識もあって、とてもレベルが高い方達だったので、このコースを受けた後に、目に見えて効果が現れる、患者さんの満足度がすごく高くなると期待するのは難しいかも知れませんけど、様々な方向で結果が向上していくことは言えると思うし、そのための周到な道具だてをしています。
私としては今後の広がりを期待していますが、1グループ3人という現在の枠組みが妥当なので、一度に受講する人数を増やせない、今と同質の優秀なスタッフを揃えられるか、スペースを確保できるかといった課題があるので、すぐには拡大できないのが事実です。でも、患者サイドの満足度を重視するというのは、今や時代のトレンドですし、求められているのは確かですから、今後何年かしたら必ず広がるでしょう。今の研修に改良を重ねて、より良い内容のものが実施できると思いますね。

最後に、今回の取材に快く応じていただいた皆様ならびにスタッフに感謝いたします。
【講師/スタッフ】(敬称略/順不同)
・本松茂(ゆきぐに大和総合病院内科)・長谷川万希子(高千穂大学社会福祉教授)・舘泰雄(石川第一病院副院長)・和座一弘(和座クリニック)・前田泉(マーケティングコンサルタント)・関義元(国保鋸南病院内科)・箕輪良行(船橋市立医療センター)
【模擬患者(ボランティア参加)】
・<乳癌患者会あけぼの会>の皆さん(下川さん、小川さん、萩原さん、千島さん、塙さん、富樫さん、宇田川さん)

※第2回「コミュニケーションスキル//患者満足訓練コース」は、2004年2月7日/8日の二日間、東京秋葉原の日本医療事務センターで行われました。
(協賛:地域医療振興協会、日本プライマリケア学会、日本医療事務センター、TMマーケティング)

(取材日:2004年2月8日/2月20日)


次回は《クオリティー・オブ・ライフ(生活の質)》を予定しています。