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松村:立て替え前の松村医院で何か思い出に残っていることは?

先代:線路際の医院にいたときに一度、小さいボヤを出したことがあったのです。幸い、自分たちで消せる程度のボヤだったのですが、その日も診察があったため、びしょびしょの中でそれでも診察したことがありました。また砧の映画撮影所にも近いという土地柄もあって、有名な患者さんもいらっしゃいました。時間外にお忍びで来られる女優さんや映画監督さんもいらっしゃいましたし、往診もさせていただきました。土地柄と言えば、やはり外国の人が結構いらっしゃいました。私がアメリカで診療していたこともあったので、紹介でこられる外国の患者さんもいましたね。

松村:知らない方もいらっしゃると思うので聞いておきたいのですが、いまの私に替わる切っ掛けは何だったんでしょうか?

先代:病気で手術の後、わたしの声が出なくなって聞き取れない患者さんがいるということでいまの医院長に代替わりをしました。いまでも古くからいらしている患者さんの中には、私に会いたいと声をかけていただくことが多く、お会いすると中には喜んで抱きついたり、泣いてくれるおばあちゃんもいます。医者冥利に尽きます。で、息子たちに引き継ぐ際は、「すべてを任せる」という気持ちでしたので、ここまでが逆に大変だったでしょうが、頑張ってくれているので安心しています。

松村:そうですか、ありがとうございます。


私の診療室

(取材日:2008年6月25日)